近年、DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉を耳にする人は多いのではないでしょうか?
新型コロナウイルスの影響もあって、現在企業活動のIT化が急速に進んでいます。
もちろん営業活動も例外ではなく、営業部門もDX化することが求められているのです。
この記事では、営業DXの意味や導入するメリット、成功するポイントについて解説します。
営業担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
営業におけるDXとは?
そもそも営業におけるDXとは、どのような意味なのでしょうか?
営業DXとは顧客が購買する目的や行動を把握して営業プロセスを再構築し、デジタルツールなどのIT技術を組み合わせて営業活動の全体最適化を行う活動のことです。
とくに近年はインターネットの急速な普及によって、顧客のニーズが多様化しています。
そして、このような状況の中では従来のような足で稼ぐ営業は通用しなくなっているのです。
これからの時代は顧客の購買データを取得し分析したり、適切なITツールを使用したりして、効率良く営業活動をすることが重要といえます。
デジタル化と営業DXの違い
デジタル化と営業DXを混同して考えてしまう人が多いので、ここでは両者の違いを説明します。
まずデジタル化とは、人が行っている作業の全体や一部をITツールに置き換えることによって効率化を目指すことです。
例えばRPAを導入して社員の勤怠チェックを自動化する、台帳に記載があったら自動でメール送信するなどを挙げることができます。
デジタル化とはツールを導入して定着したら成功といえます。
一方で営業DXは、ITツールをあくまでも手段と考えているので、ただツールを導入してもデジタル化したことにはなりません。
自社の営業活動の中でデジタルツールを有効に使いながら営業力全体を効率化し、高い利益を獲得することを目指します。
DXの目的
なぜ営業をDX化する必要があるのでしょうか?
ここでは、DXの目的について確認していきます。
顧客価値を革新する
営業にDXを活用すれば、顧客価値を革新することができます。
顧客価値とは、お客様が製品やサービスを適切だと感じる価値のことです。
現在はどんなに商品やサービスの内容が良くても、顧客が得られる価値が大きくなければ購入にはつながりません。
そういった面でも営業活動にDXを組み合わせれば、営業力強化や営業生産性の向上につながり顧客価値を高めることができます。
業務をデジタルで変革する
DXの目的は業務をデジタルで変革することです。
現代はテクノロジーの急速な発展によって、人間が行うと非効率な作業が可視化されるようになりました。
DX化をすれば、RPAやCMSなどのツールによって業務を効率化することができます。
ビジネスで利益を最大化するためには売上を上げてコストを抑えることが基本なので、データとデジタル技術を活用して企業活動の全体効率化を図るようにしましょう。
属人的な判断や意思決定を高度化する
営業DXを導入することによって、属人的な判断や意思決定を高度化できます。
従来の営業方法は営業担当者と顧客との結びつきが強いため、現場の判断や意思決定は営業担当者が任せられることがほとんどです。
しかし、人は感情的に物事を考えてしまうので、属人化すると合理的な判断ができない場面が増えてしまいます。
営業DXを推進すれば、客観的なデータに基づく判断が下せるのでより高度な意思決定が可能になるでしょう。
営業DXのカテゴリー
営業DXは全部で7つのカテゴリーに分けることができます。
ここでは営業DXのカテゴリーについて見ていきましょう。
①営業促進・加速
営業DXのカテゴリー1つ目は営業推進・加速です。
主にSFAなどの営業支援システムを導入し、顧客や案件の管理から営業マンの活動経歴までを可視化します。
また、営業活動におけるデータを分析することも可能なので、営業の標準化にも役立てることができるでしょう。
②カスタマーサポート
営業DXのカテゴリー2つ目はカスタマーサポートです。
カスタマーサポートは顧客からの問い合わせに対応しますが、チャットボットや自動音声応答システムを導入することで、問い合わせをある程度自動化することができます。
また、適切なタイミングで顧客に対してメールやLINEなども送付することも可能です。
③インテリジェンス・解析
営業DXのカテゴリー3つ目はインテリジェンスと解析です。
デジタルツールを使用することで、AIが集積したデータを分析してくれます。
勘や経験だけではない顧客ニーズの把握、ノウハウやスキルの属人化を防ぐために活躍してくれる分野です。
④顧客関係管理
営業DXのカテゴリー4つ目は顧客関係管理です。
主にCRMなどのITシステムを導入し、複数のチャネルから集めた顧客情報を統合することで営業活動の支援に活用します。
顧客の年齢や性別、居住地や商品の購買履歴といった情報を管理して分析することによって、顧客のニーズに合わせたアプローチがしやすくなるでしょう。
⑤顧客体験
営業DXのカテゴリー5つ目は顧客体験です。
プロダクト単体で価値提供するのではなく、体験全体で顧客を満足するようにさまざまなツールを使います。
例えば顧客が購買するときに、顧客のニーズを満たすような最新情報やクーポンなどを配信することがあげられるでしょう。
⑥コンタクト・コミュニケーション
営業DXのカテゴリー6つ目は、コンタクトやコミュニケーションです。
ここではお客様との会話の質を向上させるために、会話の内容を分析して最適化するツールなどが導入されます。
また、Web会議システムやチャットツールにより、社員同士のコミュニケーションの活発化を図ることも可能です。
⑦人材開発・コーチング
営業DXのカテゴリー7つ目は、人材開発やコーチングです。
営業担当者を教育したり、自信やモチベーションの低下を防ぐための領域といえます。
例えばオンラインの学習プラットフォームや、人事評価システムなどが代表的なツールです。
営業DXのメリット・成功のためのポイント
営業DXには具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、営業DXのメリットや成功のためのポイントについて紹介します。
メリット
生産性・効率性の向上
営業DXを推進することによって、生産性・効率性が向上します。
現代の日本は人口が減り続けているので、一人当たりの営業マンがどれだけ価値を出せるのかが重要です。
そんな状況の中で積極的にデジタルツールを利用すれば、本来人がやる必要のない作業を機械に任せることができます。
その分商談など重要な仕事に注力できるので、必然的に生産性が向上するでしょう。
属人化からの脱却
営業DXを推進することで、属人化から脱却するというメリットが得られるでしょう。
とくに営業部門では案件の情報を担当者しか知らなかったり、担当者の異動などで顧客の情報が失われてしまったりと属人化が問題となっています。
そこにデジタルシステムを導入すれば、顧客情報を一括して管理できたり、業ノウハウも共有できるので属人化の課題を大きく改善することができるでしょう。
マネジメントの効率化
営業DXのメリットとして、マネジメントの効率化があげられます。
従来のマネージャーたちは、営業担当者がどのように顧客と関係を築いているのかを確認するために現地へ同行するしかありませんでした。
しかし、Web会議システムなどを利用すれば、容易に商談状況や指導が確認できるようになります。
このように営業DXの推進はメリットが大きいので、ぜひ導入を検討してみてください。
成功のためのポイント
目的の明確化
まずはDXを導入する明確な目標を立てましょう。
目標を明確化しなければ対処すべきタスクが可視化せず、スケジュールを立てることもできません。
営業DX化に限らず、ビジネスにおいて明確な目標を持つことは基本です。
具体的な目標設定の方法として、SMARTの法則という有効なフレームワークがあります。
ここでは詳しく解説しないので、気になる方はぜひ調べてみてください。
営業プロセスの再構築
営業DXを成功させるには、営業プロセスの再構築が必須となります。
非効率な営業活動を続けていても、満足する営業結果を得られるわけがありません。
そのため、現状の営業活動において各プロセスの非効率な作業を洗い出し、ITツールやWebシステムを利用して業務を効率化できないか検討しましょう。
営業DXの必然性理解
営業DXの成功には営業DXの必然性理解が重要です。
そもそも営業DXをなぜ進めるのか、そして導入したらどんなメリットがあるのかを営業マン一人ひとりが理解しなければDX化が定着することはありません。
とくにお客様の感情や気持ちを尊重し、人間関係を構築してきた人たちには受け入れるのに時間がかかるでしょう。
しっかりと科学的な根拠を提示するなど、自社の営業マンに理解してもらえるような取り組みをするのがおすすめです。
顧客行動の見える化
顧客行動の見える化も、営業DXが成功するポイントの一つです。
顧客の行動は通常目に見えない潜在的な欲求から生まれます。
そういった心理的な欲求を言語化し、顧客の潜在課題から購入後までの行動を見える化しましょう。
そうすれば最適なアプローチが見えてきて、より顧客のニーズを満たすことができます。
営業課題の抽出
営業DXを成功させるために営業課題を抽出しましょう。
今の営業活動において満足のいく結果が出ていないなら、必ず営業プロセスのどこかに問題があります。
そういったボトルネックを見つけるには、営業プロセスをさらに細分化して見つけ出すしかありません。
もし課題が見つかったら改善と効果検証を繰り返し、最適なアプローチ方法を見つけましょう。
営業マネジメントの重点化
営業DXを成功に導くには、営業マネジメントの重点化が必須になります。
最適な会社組織を構築するには、仕組みづくりだけでなく全体を取りまとめるマネジメントが必要です。
営業マネージャーは目標と現在とのギャップを把握し、目標を達成するための対策案を講じます。
そして、合理的な判断だけで物事を進めるのではなく、人の感情も意識してマネジメントをしていく必要もあるでしょう。
営業人材の育成
営業DXを成功させるには営業人材の育成が必要です。
現代ではインターネットの普及もあって、お客様自身が簡単に情報を取得できるようになりました。
そのため、ただ自社商品やサービスの機能説明、メリットを紹介するだけでは契約が取れなくなってきているのです。
顧客の潜在ニーズを聞き出し、適切な営業手法でアプローチできる高度な営業マンを育成できるようにしましょう。
どのようなツールを使うのか
営業DXを推進するにはツールを導入するのですが、どのような種類のツールがあるのでしょうか?
ここでは、営業DXに関わるツールを紹介していきます。
WEB会議などのオンライン営業ツール
まず紹介するのは、Web会議などのオンライン営業ツールです。
代表的なツールとして「Google Meet」「Microsoft Teams」「Zoom」などがあげられます。
現代では非対面営業が主流となってきているので、オンライン営業ツールの導入は必須となるでしょう。
オンラインセミナー管理ツール
営業DXにはオンラインセミナー管理ツールが必要になります。
オンラインセミナー管理ツールは、セミナーの申し込みからアフターフォローまで一元管理できるツールです。
ツールをうまく使用してオンラインセミナーで集客し、顧客を育成しながらコンバージョンにつなげましょう。
営業動画・セミナー動画の作成・編集ツール
営業DXには営業やセミナー動画の作成・編集ツールも使用することが多いです。
自社の商品・サービスの説明、使い方、購入者の声などは、あらかじめ動画にしておけば営業担当者が説明する手間が省けます。
また、セミナーなども一回動画を作成すれば何度も使い回せるため、営業の効率化を図ることができるでしょう。
MA(マーケティングオートメーション)
業務効率化や顧客育成を行うための機能が多数備わっているMA(マーケティングオートメーション)。
具体的には顧客情報や購買履歴などのデータを一元管理できたり、メールを自動配信する仕組みなども構築できたりします。
また、構築に時間がかかるステップメールなども自動化できるため、工数削減には効果的なツールです。
SFA(商談管理)
営業DXの代表的なツールとして、SFA(営業管理・商談管理)が挙げられます。
SFAを導入すれば全営業担当者がどの顧客にアプローチしているのか、進捗はどのようになっているのかを可視化することが可能です。
そのため、自社の営業活動の優れている部分や課題なども把握しやすくなるでしょう。
営業DXを実現した企業例
実際に企業で営業DXに成功した例を参考にしたいという方は多いでしょう。
ここでは、営業DXを実現した企業例6選を紹介します。
①富士通
まず紹介するのは、日本を代表する総合ITベンダーの富士通です。
富士通は営業DXを推進する中で、自社の営業活動を徹底的に見直した結果、営業職を廃止しました。
その代わりに「ビジネスプロデューサー職」と呼ばれる顧客と直接コンタクトを取る部門を設置しています。
一つの部門を廃止にする大きな変革ですが、参考にできることも多いといえるでしょう。
②テスラ
2つ目に紹介するのは、アメリカのシリコンバレーを拠点とする自動車メーカーのテスラです。
テスラは2019年に実店舗で自動車を販売するのを撤廃し、オンラインへ完全移行しました。
実際に試乗したり直接営業担当者とコンタクトをとれないというデメリットもありますが、一定の走行距離や期間なら全額返金するという対応をとっています。
③NTT東日本
3つ目に紹介するのは、日本の大手電気通信会社のNTT東日本です。
NTT東日本は、2015年からインサイドセールス部門という新規事業を発足しました。
これまでの販売方法とは異なり、見込み顧客に対して非対面で営業活動を実施することで、見込み顧客の獲得や受注額を大幅に引き上げています。
このような成功をつかむにはCRMやSFAなどを導入するだけでなく、社内体制を整える必要があるでしょう。
④Best Buy(ベストバイ)
4つ目に紹介するのは、世界最大の家電量販店として有名なBest Buy(ベストバイ)です。
ベストバイは実店舗での販売とWebサービスを組み合わせることで、大きく収益を伸ばしました。
例えば、24時間年中無休でカスタマーサポートをする体制を構築、ネットで購入した商品を実店舗で受け取れるサービスなどが挙げられます。
⑤Microsoft(マイクロソフト)
5つ目に紹介するのは、世界最大のソフトウェアメーカーであるMicrosoft(マイクロソフト)です。
マイクロソフトはソフトウェアの売り切り販売をクラウドサービスへ移行しました。
Office365をクラウド化したことで、飛躍的に顧客満足度が向上した結果、2019年にマイクロソフトは時価総額1兆ドルを獲得しています。
⑥フォルクスワーゲン
6つ目に紹介するのは、ドイツの大手自動車メーカーであるフォルクスワーゲンです。
フォルクスワーゲンはソフトウェア部門を設立し、自動車関連のソフトウェアを車両に内蔵するなどデジタル変革が行われています。
他にも、カーシェアリングや駐車場サービスをインターネット上で展開するなどの取り組みも行っているようです。
営業DX体制を構築する流れ
営業DX体制を構築するには、以下の3つのステップに従って実行する必要があります。
最後に、営業DX体制を構築する流れについて見ていきましょう。
①現在の営業体制を棚卸する
まずは、現在の営業体制を棚卸しましょう。
現状の営業体制を棚卸しなければ、どこに課題や問題があるのかを明確にすることができません。
とくに営業DXは営業部門だけでなく、ITシステム部門や人事部など複数部門にまたがります。
そのため、各部門の現場の意見をヒアリングし、営業DX化できるポイントを具体化していきましょう。
②営業DXによる組織の最終形をイメージする
次に、営業DXによる自社組織の最終系をイメージしましょう。
営業DX体制を構築することで、どうような効果があるのか具体的な数値目標を定めて目標を明確化していきます。
その場合社内だけで決めるのではなく、DX化のプロフェッショナルであるITコンサルタントなどの意見を聞くのもおすすめです。
もちろん営業DXの推進は自社のメンバーが主導で行うべきですが、外部からの意見も参考にするといいでしょう。
③適切なツールを選定する
最後に、適切なデジタルツールを選定し現場に導入しましょう。
実際にデジタルツールを導入するには、社内インフラの構築やモバイル端末・ハードウェアの購入など、さまざまな環境構築が必要になります。
ITシステム部門や現場の社員とうまく連携しながら、社内の設備・インフラを整えて必要であれば改修を行いましょう。
まとめ
ここまで営業DXとは何か、営業DXの目的や導入するときのポイントについて説明してきました。
従来の非効率で属人化された営業体制では、変化の激しいビジネス環境で生き残ることができません。
そのため、営業DXを推進することで営業プロセスを再構築し、営業戦略や組織の体制を変革する必要があります。
ただし、営業DX体制を構築するには新規部門やプロジェクトの設立・社内インフラやツールの導入・データ連携や解析など、さまざまなDX化の作業を実施しなければいけません。
自社の営業担当者だけで完結するのはかなり困難なので、ITシステム部門や外部のDX推進チームと連携するようにしましょう。
弊社は他にもDXに役立つ情報も発信しているので、併せてご覧ください。