ビジネスにおいて、営業戦略・戦術を考えることは非常に重要です。
ただ、漠然と営業戦略を立てるのではなく、具体的に立てていかないと効果が出ません。
- 売上を上げるための営業戦略はどのように立てたらよいのか
- より効率よく営業戦略を立てるにはどうしたらよいのか
- なぜ営業戦略を立てることが重要なのか
このような悩みを持っている営業マンは多いのではないでしょうか。
そこで、今回の記事では営業戦略とはなにか、そして営業戦略の立て方や役に立つ分析方法を徹底解説していきます。
営業戦略について知りたい方はぜひ最後まで読んでください。
営業戦略とは?戦術との違い
企業が業績を伸ばしていくためには、的確な営業戦略を策定し実行することが重要です。
ただ、営業戦略と戦術の区別が分からず、具体的にどうすればよいか決められないまま活動している企業も少なくありません。
以下で営業戦略とはなにか、戦術との違いについて紹介します。
営業戦略とは
営業戦略とは、売上向上や顧客数増加、市場のシェア拡大などの利益目標を達成するための計画です。
また、競合に対して自社のマーケットシェア拡大のためにどのポジションを取りにいくのかなどのブランディング戦略も含まれます。
企業経営の根幹にあたるものであり、営業戦略の企画立案は経営者やマネージャーにとって重要な業務です。
利益目標を決め、実現するために何をどのように進めていくのかを中長期的に考えていかなければなりません。
営業戦術との違い
営業戦略が利益目標を達成するための計画なのに対して、営業戦術とは営業戦略を達成するための具体的手段です。
優れた営業戦略があったとしても、営業戦術が乏しいと利益目標を達成できません。
すなわち、営業戦術は営業戦略の一部です。
ひとつの戦略のなかに複数の戦術があるという関係性になります。
目標達成のためには、現時点で保有している人材や物資を最適に割り当てることが重要です。
例)飲食店が利益目標を決める場合
- 営業戦略:半年で新規顧客を2〜3%増加させる
- 営業戦術:店舗チラシを1万枚配布する、公式LINE登録者を1,000人増やす、Instagramフォロワー数を1,000人増やすetc…
営業戦略において大切なこと
営業戦略において大切なことはなんでしょうか。
以下では、営業戦略において大切なポイントを紹介します。
市場調査を行う
商品の販路やニーズを把握するために、マーケット状況を把握する調査をしましょう。
具体的には、以下のようなことを行います。
- 自社商材が市場においてどのような環境に置かれているか(レッドオーシャンなのか、ブルーオーシャンなのかetc…)
- 顧客ターゲットを取り巻く環境の状況把握
- 競合他社の営業戦略調査
客観的視点から市場調査を行うことで、どのような営業戦略を取ればよいかが明確になります
現状を数値化、可視化する
自社製品の価格や売上金額など、現状の問題点や課題などを数値化、可視化していきます。
このプロセスをすることで、自社が置かれている状況が明確になります。
その際には、以下の2点を分析することが重要です。
営業を数値化した分析
営業活動におけるさまざまな要素を数値化していきます。
これをすることで自社の強みや改善点を洗い出せるので、現状の営業力が把握しやすくなるのがメリットです。
具体的には、以下のようなことが数値化できます。
- 訪問数、新規顧客獲得数
- 1件あたりの電話やメールの回数や所要時間
- 1日の営業活動時間
- 営業コストや費用対効果
- 毎月の売上額
このような分析をすることで業務の効率化や改善を図れます。
顧客目線の定性的な分析
営業を数値化した分析と同時進行で、顧客目線の顧客目線の定性的な分析もしていきます。
具体的には、以下のようなことが分析の対象となります。
- 営業マンへのインタビュー、記述式アンケート
- 実際の商談内の会話内容や顧客への質問などの行動観察
- 顧客からの問い合わせやクレーム
数値で表せないので、人によって評価が異なる場合が出てきます。
しかし、それだけ改善点が多く洗い出しやすいことがメリットになります。
課題を明確にする
営業戦略を立てるうえで、現状の分析結果から課題を明確にすることが大事です。
具体的には、以下のような視点から課題を洗い出していきます。
- 現状の人材と物資を最大限に活用できているのか
- 営業フローの中で効率化・簡略化を図れる部分はないか
- 新規顧客は獲得できているのか
- 時代の変化とともにターゲット層もその変化に合わせられているのか
すべての課題が解決できるとは限りません。
そうであっても、まずはすべての課題を洗い出し現状の課題を明確にし把握することが大事です。
コアコンピタンスを把握する
コアコンピタンスとは、自社にしかできないことで他者には真似できない技術・能力・強みのことです。
自社のコアコンピタンスが何かを徹底追求することで、他者との差別化を図れます。
自社ならではの技術・能力・強みがあるのならば、それを使わない手は存在しません。
営業マンだけではなく、自社商品の開発・製造に携わっているスタッフにもヒアリングしていきましょう。
いろいろな人にヒアリングすることで、意外なコアコンピタンスに気づけるかもしれません。
コアコンピタンスを把握することで、営業戦略を立てる際に役立ちます。
営業戦略の進め方
営業戦略を立てたあとは、どのように進めていけばよいでしょうか。
以下で、営業戦略の進め方について解説します。
実行するための手段を決める
まずは、営業戦略を実行するための手段を決めます。
これをきちんと決めないと、実行できない手段を講じてしまう可能性があります。
自社スタッフの能力や規模でカバーできない営業戦術は効果的ではありません。
営業活動のフェーズごとに具体的な施策を決めていきましょう。
例)
- 見込み客:リスト作成、興味づけ
- 商談:ニーズの聞き込み、ニーズからウォンツへ変化させる
- 受注:クロージング、メリットの明確化・可視化
- 顧客維持:カスタマーサクセス、アップセル、利用状況確認
KPIの設定
KPIとは「Key Performance Indicator(キー・パフォーマンス・インジケーター)」の略称です。
日本語では重要業績評価指標と訳されています。
設定した目標を達成するために業務を数値化し、どの業務の数値をどれくらい上げればよいかを決める指標がKPIです。
すなわち、設定した目標を達成するための中間指標とも考えられます。
たとえば「1カ月で新規契約を5件増やしたい」という目標を設定したとしましょう。
この場合、「新規の見込み顧客100社電話営業とメール営業をする」というようにKPIを設定します。
これによって、営業マンもどこに力を入れればよいのか把握しやすくなります。
KPIの進捗を可視化する
KPIを設定したら、しばらく運用して進捗を可視化しましょう。
あらかじめ期間を決めておき、設定したKPIが適切かどうかを見直すことをおすすめします。
KPIを設定してから何の修正もなく目標達成までうまくいくことはありません。
当初の計画通りに施策が進んで成果が出ているか、修正すべき箇所はどこかなどをしっかりと把握することが重要です。
もし当初の計画と実際の数値に相違があった場合は、目標の修正や戦術を変更することなどを検討しましょう。
効果を検証し、改善する
KPIの設定によって実際の成果や進捗をモニターできる状態になったら、短期間で「PDCAサイクル」を回していき、効果を検証し必要な改善を加えていきます。
PDCAサイクルとは、以下の4つの頭文字をとったものです。
- P:Plan(計画)
- D:Do(実行)
- C:Check(評価)
- A:Action(改善)
PからD、C、Aの順番で実施し、再度Pに戻ります。
この作業を継続的におこなっていくことで、当初計画した営業戦術をブラッシュアップしていけます。
また、PDCAサイクルを回すことのメリットは、設定した目標に対して順調に進んでいるのか確認できることです。
もし順調ではない場合は、何が不足していて何を改善すれば目標に近づくのか仮説を立てていきます。
営業戦略・戦術立案に役立つ分析方法
営業戦略・戦術立案に役立つ分析方法があるので以下で紹介します。
それぞれ特徴が異なるので、状況に合ったものを選ぶことがポイントです。
場合によっては、複数の分析手法を組み合わせて用いることがあってもよいでしょう。
3C分析
3C分析とは、以下の3つの視点からおこなう分析です。
- Customer(顧客):市場規模、今後の成長予測、ニーズの動向 etc…
- Competitor(競合):競合相手の事業規模、製品、強みと弱み etc…
- Company(自社):顧客と競合相手の分析をもとに自社が打ち出せる施策・戦略 etc…
「C」から始まる3つの言葉の頭文字をとって3C分析と呼ばれています。
営業戦略・戦術立案に役立つ分析方法として有名な分析方法のひとつであり、3つに絞れるという意味でも便利な分析方法です。
顧客を理解したうえで競合と自社の理解を深めていくことで、よい営業戦略・戦術が作れます。
SWOT分析
SWOT分析とは、以下の4つの指標をもとに営業戦略を立てていく手法です。
Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字を取ってSWOT分析と呼ばれています。
自社内の強み・弱みは何か、業界のトレンドや競合他者の動きはどうなのかなどを把握・分析することで、自社の戦い方を定めていきます。
上の表のように4つに区分したマトリクスに書き込み、それぞれのマトリクスを掛け合わせて戦略を立案していくことが多いのが特徴です。
PEST分析・5F分析
市場・顧客を分析する際は、マクロ分析とミクロ分析という2つの方法をおこないます。
マクロ分析で用いられるのは、PEST分析です。
- Politics(政治):法律、政治動向、税制、法改正 etc…
- Economy(経済):経済水準、所得変化、景気動向、金利状況 etc…
- Society(社会):価値観、トレンド、習慣、消費者志向の変容 etc…
- Technology(技術):インフラ、IT化、技術革新 etc…
以上4つの外的要因を分析する方法で、頭文字をとってPEST分析と呼ばれています。
ミクロ分析で用いられるのは、5F(5フォース)分析です。
- 新規参入企業の脅威
- 既存の競合他社の脅威
- 代替品の脅威
- 買い手交渉力
- 売り手交渉力
以上5つの外的・内的要因を分析することで、競合他社との関係性を洗い出し、自社の収益性を高められます。
MECE
MECE(メーシー)とは、以下の4つの言葉の頭文字をとったものです。
- Mutually(互いに)
- Exclusive(重複せず)
- Collectively(全体に)
- Exhaustive(漏れがない)
営業戦略を立てていくうえで、漏れもなく重複もなく分かりやすい状態にすることが大事です。
また、新規顧客開拓をするときは、MECEを用いて全体像を浮かび上がらせましょう。
4P分析
4P分析の「4P」とは、以下の4つの戦略を意味する言葉の頭文字をとったものです。
- Product(商品戦略):顧客価値、顧客ニーズに沿った商品かどうか
- Price(価格戦略):他社と競合できる価格かどうか
- Place(流通戦略):店舗の立地、利便性は他社と比べてどうか
- Promotion(販促戦略):購買意欲を生む広告かどうか
それぞれの項目で競合他社と比較し、優位な点と劣っている点を分析します。
上で挙げた3C分析は「顧客目線」での分析に対して、4P分析は「企業目線」での分析です。
両者を併用することで、顧客目線と企業視点のどちらからでも営業戦略が導き出せます。
ランチェスター戦略
ランチェスター戦略とは、もともと戦争戦略だったものをビジネスの場で使えるように応用を加えた戦略です。
ランチェスター戦略には、第一の法則と第二の法則があります。
ランチェスター戦略は特に「弱者の戦略」として有名です。
武器効率を上げれば、弱者が強者に勝つチャンスもあるということになります。
パレートの法則
パレートの法則とは、顧客全体の2割の優良顧客が売上の8割をあげているという法則です。
「2:8の法則」とも呼ばれていて、ビジネスの場以外でもよく使われている有名な法則といえます。
この法則に従うのであれば、顧客を平等に扱うのではなく2割の優良顧客を差別することで売上維持ができると考えられます。
とはいっても、残り8割を適当に扱ってよいというものではありません。
「10項目の品質向上リストのうち上位2項目を改善すれば8割の効果がある」のような使い方をし、あくまで2割にフォーカスしたほうが成果が上がりやすいという経験則から確立した法則です。
まとめ
今回の記事では営業戦略とは何か、そして営業戦略の立て方や役に立つ分析方法を徹底解説しました。
紹介したおもな内容は以下のようなものです。
- 営業戦略とは売上向上、顧客数増加、市場のシェア拡大などを達成するための計画
- 戦略立案では状況をしっかり把握し分析結果を数値化する
- 競合他社にはない自社の強みを理解する
- 戦略推進ではKPIを設定し運用
- 進捗が可視化できるようになったらPDCAサイクルを回し効果を検証、必要な改善を追加
- 営業戦略・戦術立案に役立つ分析方法を使う
深く練り上げた営業戦略だったとしても、すぐに効果が出るとは限りません。
PDCAサイクルを回し効果を検証し、改善していくことでより効果的な戦術が出来上がります。
時間がかかるとしても、焦らず効果があがる営業戦略を立てていきましょう。